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審判

営業秘密技術を他者に特許取得されたら?

2016.01.12

コカ・ コーラが開発されたのは 130 余年前であるが 、製造方法は未だに極秘である 。 その製造方法が記載された文書は銀行の金庫に保管されていたが 、現在はコカ・ コーラ博物館の金庫に保管されている 。 しかし 、企業間の競争が激しく 、 かつ職員スカウトが頻繁に行われ、情報通信技術が発達した現代では、技術が流出・盗用され、 営業秘密紛争に飛び火する可能性が低くない。また、 他人が同一技術を独自に開発して特許を受けることもあり得る 。 企業としてはこのような事態に備え、 自社が営業秘密を保有していたことを立証する

営業秘密と先使用権
技術を保護する一般的な方法は特許を取ることである 。ただし、 特許として保護するために出願をすると 、該当技術内容が公開される。また特許は一時的な権利なので、その存続期間が終われば誰でも該当技術を自由に使える 。さらに特許を取得・ 維持するには少なくない費用がかかる 。そのため、 特許取得による利益より技術公開による損失がより大きい場合もある。もし技術公開を望まなければ、特許出願をせずに該当技術を営業秘密として保護しなければならない。しかし、ある技術を発明した人が該当技術(先発明)を営業秘密として維持する戦略を採択したとしても 、後日他人が同一技術(後発明)を開発して特許を受けることもあり得る。この場合、 先発明の実施は後発明に付与された特許を侵害することになる。ただし、一定の場合、先発明の実施者は後発明に付与された特許に対して無償の通常実施権(以下「先使用権」という)を有する。先使用権制度によれば、先発明を公開せず継続して使える 。 先使用権を有するためには特許法第103 条の規定に従って 、 特許出願時にその特許出願された発明の内容を知らずにその発明をし、またはその発明者から知得し、 国内でその発明の実施である事業をし 、またはそれを準備していなければならない。同条は日本特許法第79 条と同趣旨のものである。

先使用の立証手段(営業秘密の登録)
しかし、先発明を実施し、または実施する準備をしていたという事実を立証することが容易でない場合が多い 。かかる立証負担を減らす一つの方法は、該当営業秘密を韓国特許情報院に登録する「原本証明制度」を利用することである。 これは特許庁が運営する一種のデジタル金庫制度であって、 営業秘密保有者がその保有について立証する必要があるとき、営業秘密の原本存在の事実、保有者および保有時点の立証を手助けする。登録は営業秘密自体ではなく、それの電子指紋を登録する。電子指紋(SHA-256 bit Hash 値)とは、営業秘密である電子文書から乱数の配列値を抽出して生成した値として電子文書の固有な電子値である。営業秘密原本証明制度の長所としては 、公共機関の公信力に基づく安全性が保障されたサービスである点、電子指紋と公認認証機関の時間情報をもって営業秘密の原本および偽造・変造を完璧に証明する点、原本提出なしに電子指紋のみを利用することでサービス利用中に発生し得る秘密情報の流出を根本的に遮断できる点、多様な形態の電子ファイル(ワード、イメージ、動画など)に対応する点(ただし原本を圧縮した形態で登録する場合、圧縮した内部ファイルに対する証明可否について法的解釈が異なる場合もあり得るため、原本登録時に注意が必要)、およびインターネットに接続できれば時間と場所を問わず利用できる点である。

営業秘密原本登録の効力
注目すべきことは 、2015 年7月 29 日から施行された改正「 不正競争防止および営業秘密保護に関する法律」の第9条の2で次の通り、登録された営業秘密原本に関する推定効を規定している点である。1. 営業秘密保有者は営業秘密が含まれた電子文書の原本であるか否かの証明を受けるために 、第9条の3による営業秘密原本証明機関にその電子文書から抽出された固有の識別値(以下「電子指紋」とする)を登録することができる。2. 第9条の3による営業秘密原本証明機関は 、第1項により登録された電子指紋と営業秘密保有者が保管している電子文書から抽出された電子指紋が同じである場合にはその電子文書が電子指紋として登録された原本であることを証明する証明書(以下「原本証明書」という)を発給することができる。3. 第2項により原本証明書の発給を受けた者は第1項による電子指紋の登録当時に該当電子文書に記載された内容通りの情報を保有したものと推定する。
かかる推定効があるため、登録者が営業秘密を保有していたことが推定され、他人がそれを争う場合は、保有していなかったということをその他人が立証しなければならない。

2015 年 11 月現在、 登録された営業秘密はおよそ9万件である。登録するためには韓国の公認認証書(電子商取引の際に必要な本人確認のための電子証明書)が必要である。外国人の場合、韓国代理人を通して登録できる。
 
<今月の解説者>
 特許法人 佳山 呉圭煥(オ・キュファン) 代表弁理士 米国弁護士(1960 年生)
 ソウル大学工学修士、東京大学法学修士、米国 Cornell Law School (LL.M.)
 現在、大韓弁理士会 副会長および AIPPI Korea 副会長(監修:日本貿易振興機構=ジェトロ=ソウル事務所副所長 笹野秀生)

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